こんにちは。ヒット習慣メーカーズの江です。
もうそろそろお盆休みですね。各地で猛暑が続いていますが、いかがお過ごしでしょうか。真夏は熱中症予防も大切ですが、私にとって、思いきり体を動かしたり海で遊んだり山に登ったりと様々な楽しみ方を満喫できる季節でもあります。「山の日」が近づいてきたので、夏にしか登れない名峰や高山植物を楽しめる山など、人混みを避けつつどの山に行こうかなと考える今日この頃です。
さて今回のテーマは、中国で人気急上昇の「シン・シティースポーツ」です。
一昔前の中国における「シティースポーツ」といえば、中国の国技とも言われる卓球や中高年に人気な広場ダンスなどをイメージされる方も多いかと思います。ここでご紹介する「シン・シティースポーツ」は、都心から離れた場所に行かずとも、都市部にいながら楽しめるフライングディスク、サーフボードやサーフスケートなどの新興スポーツです。
では、中国の人々はこういった「シン・シティースポーツ」をどのように楽しんでいるのでしょうか。
まずは代表格で、誰でもできる敷居の低い、「フライングディスク」です。
1年前まではめったに聞かない種目でしたが、「フライングディスク(中国語で“飛(フェ)盤(パン)”)」という検索ワードをBaidu指数で調べてみると、下記のように今夏に入ってにわかに人気を集めていることが見て取れます。
安価に手に入るフライングディスク(回転させ投げて遊ぶ円盤)を手に持ち、動きやすい服装で、スニーカーを履き、手袋でもすれば、装備は完了です。場所も広かろうが狭かろうが、生活圏の中にある公園、広場や川辺の空き地など、少し空いたスペースがあればプレーすることができます。フライングディスクは、激しい競り合いや強い身体接触があるスポーツと異なり、体がぶつかることもほとんどないので、コロナ禍でも適度な距離を保ちつつ楽しむことができます。それに、年齢性別問わず、体力に差があっても一緒にプレーすることも魅力の一つです。
続いては、「サーフボード」。海に囲まれている日本と異なり、中国ではマリンスポーツに馴染みのない人が大多数ですが、今年の夏、街を流れる川に入り、大きなサーフボードの上に立ち、パドルを漕いで水面を進んだり波に乗ったりする人を見かけることが急に増えてきました。人生で初めてサーフボードに乗ってみたと、故郷の長沙にいる友人からもよく聞きます。サーフボードは波や風がなくても楽しむことができ、初心者でも取り組みやすい点が魅力ですし、20代の若者に限らず、アラフォーぐらいのミドル世代が挑戦するケースも多いそうです。アレンジの自由度から、パドルを漕いでクルージングを楽しんだり、タイムを競い合ったり、川釣りをしたり、サーフボードの上に立ってヨガをしたりと楽しみ方は様々。いつもと違う角度から、住み慣れた街を見つめ直す新しい体験を楽しめます。
そして、「サーフスケート」も人気な種目。「サーフスケート」は中国語で「陸(ルー)沖(チォン)」と言い、つまり陸上でサーフィン(中国語で“沖”)と同じような動きができるので、一般的なスケートボードよりも簡単に乗りこなすことができます。海に頻繁にいくことが難しい内陸部に住んでいても、風を受けながら街中を滑走する爽快感が得られやすいことから、中国の若者の間で人気が高いアウトドアスポーツの一つとなっています。さらに、ミドル世代ではまっている人が多く、女性の割合が多いことからも「サーフスケート」の面白さがうかがえます。
それではなぜ、このような「シン・シティースポーツ」が中国の生活者を魅了しているのでしょうか?その理由は大きく2つあると考えます。
1つ目は、誰でもすぐに始められて楽しめる手軽さにあると思います。以前、ヒット習慣予報 vol.123『野餐@中国』でも触れたことがあるように、中国では、生活に余裕がある80後や90後世代(1980年代後半~1990年代生まれの20~40代前半)を中心に、数年前から空前のアウトドアブームが続いています。「シン・シティースポーツ」の場合は、生活に余裕がなく、高価な装備やマイカーなどを買えなくても、遠くまで出掛けなくても、体力に自信がなくても、できる場所が都市生活圏にあるため、気軽に始めやすいのです。その上すぐにうまくなれるので、初心者でもちょっとした達成感を得られ、続けやすいでしょう。
そして、2つ目は、物理的に程よい距離を保ちながら、社交手段として成り立つところではないでしょうか。コロナ禍によりオンラインでコミュニケーションを取ることがこれまで以上に増えてきた中、開放感のある環境で仲間と触れ合いながら、過度な接触を避けられる「シン・シティースポーツ」が他のスポーツより選ばれやすいと言えるかもしれません。
最後に、「シン・シティースポーツ」にどのような可能性があるか、新たなビジネスチャンスを具体的に考えてみました。
最近は健康維持のために、毎日仕事が一段落した夕方頃に、一人で黙々ランニングに励むことが多いですが、せっかく海辺に住んでいるので、友人を誘ってサーフボードでも始めてみたいなと思います。
▼「ヒット習慣予報」とは?
モノからコトへと消費のあり方が変わりゆく中で、「ヒット商品」よりも「ヒット習慣」を生み出していこう、と鼻息荒く立ち上がった「ヒット習慣メーカーズ」が展開する連載コラム。
感度の高いユーザーのソーシャルアカウントや購買データの分析、情報鮮度が高い複数のメディアの人気記事などを分析し、これから来そうなヒット習慣を予測するという、あたらしくも大胆なチャレンジです。
2017 年博報堂に中途入社。
近いようで遠い中国のヒット習慣から仕事のヒントを探す日々。
中国で一番辛いと言われる故郷の湖南料理をこよなく愛する、生粋の「辛党」。