こんにちは。ヒット習慣メーカーズの江です。
朝晩は、まだまだ冷え込みますが、日中は暖かく春の訪れを感じる季節となってきました。ぽかぽか陽気に誘われてついウトウト、「春眠暁を覚えず」という言葉があるように、春は眠くなりやすい季節でもあります。昼間眠くて仕方ない、ぼーっとしてしまうという人には、昼寝がおすすめ。出社時はランチに出かけて1時間、という場合が多いですが、在宅勤務になるとランチの時間は20~30分程度で済まされることも多いでしょう。私はこの頃、ほとんど在宅勤務なので、午後に眠気が訪れてきた際に、30分間サクッと昼寝をしています。適度な昼寝はリフレッシュできるため、有意義な休憩の取り方だと実感しています。
さて今回のテーマは、中国で最近、度々話題に上る「昼寝フリー」です。
日本では授業や仕事の合間に昼寝をする機会は、あまりないかもしれません。しかし、中国では、幼稚園から高校まで、昼休みが長く一度家に帰り、ご飯を食べた後昼寝をしてから再び登校する慣習があります。大学についても、生徒の多くは大学の敷地内の学生寮に住むため、昼休みは一度部屋に帰り昼寝をするのが一般的です。こういった昼食後に寝る習慣は中国語で「午睡(ウーシュイ)」といい、忙しい社会人になっても根強く残っていることから、「昼寝フリー(中国語で“午睡自由”)」を求めてにあの手この手で対策を講じています。「昼(中国語で“中午”)」という検索ワードをBaidu指数で調べてみると、下記のように昼の過ごし方等に対する関心度が年々高まってきていることが見て取れますね。
では、中国の人々、特に若者がどのような「昼寝フリー」対策を講じているのでしょうか。
まずは快適に眠るための「昼寝グッズ」。各自、職場に持ち込むことが増えてきているようです。机に突っ伏して眠る時に頭巾のようにかぶることで机の上での抜群の安定感と騒音のシャットアウトを実現している「ミニ枕」、椅子にもたれかかって眠る時に使う「椅子にくくりつけ可能な枕」、首にまきつけて枕替わりになる「エアピロー」、「アイマスク」、「睡眠向け耳栓」等々。自分に合った寝方を見つけてお気に入りグッズを駆使して上手に昼寝をしています。
続いては、新たな「昼寝スペース」の開拓です。昼休み時間中に、お金を払ってまで、映画館、カラオケボックスや美容院に入って一睡する人も珍しくなくなってきました。近年、中国の大都市に、過労気味の社会人向けの「昼寝専用カプセルホテル」なんてものも出てきました。一昔前は、屋外で寝たり、公園の椅子の上で寝たりと、街で昼寝をする人も少なくなかったのですが、新型コロナウイルス感染症の流行を経験して屋外などの場所で無防備な状態で眠ることをためらう人も少なくないようです。
他にも、「昼寝フリー」は大人に限った話ではないようで、昨年、中国南東部にある浙江省杭州市の小学校の教室に、昼寝用ベッドに変形可能な学習机が試験的に導入され、子どもたちにも大好評で、話題を呼んでいます。こういったことからも、中国人の昼寝文化は社会人になってからも続くということがわかります。
それではなぜ、このような「昼寝フリー」を求める行動が増え続け、多様化しているのでしょうか?その理由は大きく2つあると考えます。
1つ目は、これまでの他人に見せるための「フォトジェニック消費」より、中国の若者の間において自分を喜ばせるための「悦己型消費」という価値観の流行が背景にあると考えます。自らポジティブな状態を守り、維持できるように、日頃多少お金をかけてもセルフケアの時間を設けようとしているわけです。
2つ目は、長期にわたってコロナ禍を経験したからこそ、健康意識の高まりとともに、日常生活における健康リスクへの関心も高まっていることではないでしょうか。インターネット時代で生活テンポは加速し、インスタントメッセンジャーアプリの普及などで深夜や休日を問わず仕事の連絡が来ることが当たり前となりつつあります。こうした中、常態化する長時間勤務に強いられて疲労やストレスと戦いながら、自分の健康状況を心配する中国の若者が増えているのです。質の良い適度な昼寝は短い時間でもスッキリするので、仕事の効率向上に役立っているのです。
最後に、「昼寝フリー@中国」を求める風潮にどのような可能性があるか、新たなビジネスチャンスを具体的に考えてみました。
私は現在、在宅勤務が多いので「昼寝フリー」がある程度叶っていると言えますが、出社勤務が増えてきたら、どのような「昼寝フリー」対策を取り入れてみようかなと考え始めたところです。
▼「ヒット習慣予報」とは?
モノからコトへと消費のあり方が変わりゆく中で、「ヒット商品」よりも「ヒット習慣」を生み出していこう、と鼻息荒く立ち上がった「ヒット習慣メーカーズ」が展開する連載コラム。
感度の高いユーザーのソーシャルアカウントや購買データの分析、情報鮮度が高い複数のメディアの人気記事などを分析し、これから来そうなヒット習慣を予測するという、あたらしくも大胆なチャレンジです。
2017 年博報堂に中途入社。
近いようで遠い中国のヒット習慣から仕事のヒントを探す日々。
中国で一番辛いと言われる故郷の湖南料理をこよなく愛する、生粋の「辛党」。