株式会社博報堂(本社:東京都港区、代表取締役社長:水島正幸、以下博報堂)は、京都大学情報学研究科の川上浩司特定教授が提唱する「不便益」(※1)を、企業のマーケティング活動に応用するための共同研究を進めてまいりました。このたび本共同研究の成果として、企業の顧客体験設計を支援するためのフレームを開発しましたのでお知らせします。
昨今、社会のオールデジタル化が急速に進むにつれ、「便利さ」の追及はますます加速しています。
しかし一方で、“「不便」さ(労力がかかる、時間がかかる等)から生み出される「益(やる気がわく、自分を肯定できる等)」が存在し、そこに積極的な価値を見出そうとする”「不便益」という考え方が注目され始め、一部のプロダクトデザイン領域においては導入が進んでいます。
博報堂は長年にわたり、年平均100社を超える企業のCRM事例を収集し、類型化と成功事例分析を行い、クライアントへの業務提案に活用してまいりました。このたび京都大学川上教授が提唱する「不便益」の考え方が、企業とユーザーとの良好な関係を築く「顧客体験設計」に適用できるものとして着目したことから、京都大学との共同研究を今年より開始いたしました。
この研究成果として、新たに企業のCRM施策の領域で、益の出やすい「不便」の手口と、その不便から得られる情緒価値につながる「益」を、それぞれ7つに類型化するあらたな知見を得ました。
博報堂ではこの成果を活用して、「便利なサービス」を「不便なサービス」へと変換し、逆発想からくる多角的で斬新な顧客体験案の創造へつながる発想支援フレームを開発しました(詳細は別紙をご参照ください)。
今後は有効な施策実例のさらなる抽出と、定量的な分析を取り入れることでメソッドの精緻化と改良を図り、クライアント企業へのより精緻なソリューション提供へと役立ててまいります。
直近では、9月に行われる京都大学サマーデザインスクール(※2)で開催されるテーマワークショップで実証実験を行うことでさらなるバージョンアップを図る予定です。
(※2) 京都大学サマーデザインスクール
様々な分野の参加者と実施者がテーマに分かれて社会の実問題に真剣に挑む3日間集中のデザインワークショップ。2011年にスタートし、これまでにのべ2,000名が参加している。